| 歓喜の優勝決定から２週間、Ｓリーグ15周年記念大会でもある今大会も残り二節となった。すでに２年ぶりの優勝を決めているジュピターズだったが、戦うモチベーションは全く下がっていなかった。２試合を残しての優勝決定はＳリーグ史上最速であり、いわば残り２試合は消化試合と言ってもいいのだが、史上最速の称号だけでは満足せず、次なるターゲットを全勝優勝に定めた。１シーズン制の大会になってからの全勝優勝は2004年の明治乳業埼玉工場しか達成していない。４年ぶりの快挙を目指して残り２試合もいつも通り全力で戦い抜く。しかし、すでに優勝を決めた余裕からか、試合前の緊張したピリピリとしたムードはなかった。良い意味でリラックスムードの中、プレイボールとなった。 いきなり初回、リラックスムードから現実に戻される。先頭打者にレフト前へ運ばれ、レフトの仁上がこれを後ろに逸らしてしまった間に二塁まで進まれると、次打者には右中間へ弾き返され、二塁ランナーがホームイン。試合開始わずか５分も経たないうちに打者２人で先制されてしまい、まさかの展開となった。マウンドには結婚式後３試合で３連勝と絶対的信頼のある高橋が登っていたが、さすがエースの風格、この展開に浮足立つことなく二塁にランナーを背負いながらも続くクリーンアップトリオを堂々と三者連続三振に取って最少失点で切り抜けた。いきなり先取点を奪われ、リラックスムードから戦闘モードに戻されたジュピターズは直後の１回裏、すぐさま反撃に出る。先頭の田辺が、あわやホームランという当たりの特大エンタイトルツーベースで出塁すると当然のように三塁へ盗塁。一死後に敵失の間にホームを駆け抜け同点に追いつくと、敵失出塁から二盗で二塁に進んだ鈴木を置いて、佐藤がレフトへタイムリーツーベースを放って逆転に成功。さらにパスボールの間に三塁へ。再びのパスボールで生還し、この回３点を挙げた。さらに３回には一死から後藤が四球で出塁し、捕逸の間に二塁へ進むと、１打席目に特大二塁打を放った田辺が今度はライトへ特大スリーペースを放って１点を追加すると、続く伊藤も鮮やかにセンター前に弾き返して田辺が楽々とホームを踏み、さらには鈴木が四球、佐藤の内野ゴロでランナーが入れ替わるが手塚も四球で二死満塁のチャンスを迎え、続く西浦がセンターへ適時打。鈴木に続き佐藤も生還、一塁ランナーの手塚は三塁を狙うもののタッチアウトでチェンジとなるが、この回３本の長短打で４点を挙げてリードを広げた。さらに４回には連続四球と死球で無死満塁の大チャンスを貰うものの、続く仁上がショートライナーで一塁ランナーの高橋が戻りきれずにダブルプレー、次打者の箕浦が三振に倒れて無死満塁で１点も奪えなかった。中盤から下位打線の弱さが露呈してしまい、今後の課題として残った。 初回、いきなり打者２人で１失点した高橋だったが、その後は快調に自分のペースで投げた。２回は三者凡退、３回は先頭打者に二塁打を打たれ、次打者には死球とピンチを招くものの初回同様にクリーンアップトリオを三者連続三振に仕留め得点を許さず。４回も満塁のピンチを背負うが最後はきっちりと三振を奪って結局、４イニングを投げて奪った三振の数は５者連続を含む10奪三振。12アウトのうち10ヶのアウトを三振で奪う快投であり、特に相手クリーンアップトリオに対しては７打数７奪三振と前に飛ばすことすら許さなかった。４回を投げて勝ち投手の権利を持ったまま、マウンドを仁上に譲った。 代わった仁上が５回を無難に投げた直後、ジュピターズの攻撃は再び上位から主軸打線に周ってきた。一死からラストバッターの後藤が四球を選んで出塁すると、一番打者の田辺は簡単に３度目の長打を放つ。田辺にとっては2002年以来６年ぶりとなる３安打猛打賞、しかも長打３本のおまけ付きで二、三塁とすると伊藤も今日２本目のタイムリーで１点を追加。さらに鈴木がセンターへのライナーがヒットとなり、田辺、伊藤が相次いでホームを踏み、打った鈴木も三塁を狙うが残念ながら憤死。しかし、この回３点を加えて得点を二桁の大台に乗せた。 時間的に最終回となった６回表、内野のミスや２本のヒットで２点を失うものの、大勢に影響はなく結局、宿敵フィッシャーズに対しても10対３と快勝をおさめ、これで今大会無傷の９連勝。いよいよ悲願の全勝優勝達成まで、あとひとつとした。この試合、４回まで投げて勝ち投手となった４連勝の高橋が今大会Ｓリーグ最多勝を決めた。最終節、フラワーズの投手の成績次第では２人で同数受賞となるが、高橋が最終節も勝利すれば単独受賞も狙える。ジュピターズ投手陣にとっては1998年の久保田以来の最多勝、久しぶりに訪れた機会なので当然、最終節も高橋は勝利を狙って単独最多勝を決めるつもりだ。また、この試合２回を投げ四死球ゼロの仁上が自身３度目のベストコントロール賞に王手をかけた。このままのペースを保てばＳリーグ記録も更新できそうである。打者の方でも、この試合ノーヒットながら２四球のため未だ高打率をキープしている手塚が自身３度目の首位打者、それもＳリーグ記録更新のかかる打率を残せるか注目が集まる。長打３本のために１盗塁しか稼げなかった田辺も３年ぶりのＳリーグ盗塁王最有力であり、いずれも最終節には決定する。チームの全勝優勝と併せて個人タイトルも注目したい。 いずれにしても、あとひとつ。みんなの心をひとつにし、自分自身が主役のつもりで、チームスローガンである「楽しみながら勝つ」を実行させれば必ず結果はついてくるはずだ。 |
| 守 備 |
名前 | 打席 | 打数 | 安打 | 打点 | 四球 | 三振 | 盗塁 | 失策 | 通算 打率 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
| 8 | 田辺 | 3 | 3 | 3 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | .409 | 中２ | … | 右３ | … | 中２ |
| 6 | 伊藤 | 3 | 3 | 2 | 2 | 0 | 1 | 1 | 0 | .316 | 三振 | … | 中安 | … | 右安 |
| 5D | 鈴木 | 3 | 2 | 1 | 2 | 1 | 0 | 2 | 0 | .206 | 三失 | … | 四球 | … | 中２ |
| D3 | 佐藤 | 3 | 2 | 1 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | .316 | 左２ | … | 三ゴ | … | 死球 |
| D5 | 手塚 | 3 | 1 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 2 | .522 | 四球 | … | 四球 | … | 三振 |
| 3D | 西浦 | 2 | 2 | 1 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | .300 | 投ゴ | … | 中安 | … | … |
| 2 | 則 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | .292 | 四球 | … | … | 四球 | … |
| 4D | 菊池 | 2 | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | .207 | 三振 | … | … | 四球 | … |
| 17 | 高橋 | 2 | 1 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | .143 | … | 三振 | … | 死球 | … |
| 71 | 仁上 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | .174 | … | 遊ゴ | … | 遊直 | … |
| 9 | 箕浦 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | .200 | … | 三振 | … | 三振 | … |
| D4 | 金子 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .118 | … | … | 三振 | … | 投ゴ |
| D | 後藤 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | .150 | … | … | 四球 | … | 四球 |
| 合計 | 31 | 21 | 8 | 8 | 10 | 7 | 6 | 3 | .257 | 試合時間1時間45分 | |||||
| 名前 | イニング | 打者 | 安打 | 三振 | 四死 | 自責 | 防御率 | 投球数 | |
| ○ | 高 橋 | 4 | 19 | 4 | 10 | 3 | 0 | 0.54 | 85 |
| Ｓ | 仁 上 | 2 | 11 | 3 | 2 | 0 | 1 | 1.97 | 27 |
