| プロサッカーリーグ「Jリーグ」が誕生した1993年、日本中がサッカーブームに沸いた年、埼玉県と千葉県の境にある三郷の地にＳリーグも誕生した。幾多の熱戦、激戦を繰り広げて月日は流れた。その間にチームの脱退や台風直撃によるグランド壊滅など様々な試練も乗り越え、今年2008年、ついにＳリーグはJリーグと同じく満15周年を迎えた。その記念すべき大会、５月には10年ぶり２度目となる東京ドームでの記念試合も開催され、大いに盛り上がりを見せた。しかし今大会も雨に悩まされた。前半に３試合、後半は台風直撃こそなかったものの、ゲリラ豪雨に見舞われてグランドが冠水。結局２試合の順延があった。しかし９月後半からは何とか天候に恵まれ、昨年のような12月突入は避けることができ、今日、15周年記念大会でもある第16回大会の最終節を無事に迎えることができた。 前年に無念の準優勝に終わったジュピターズは今年は「反撃の19年目」と題し、最初からＳリーグの覇権奪回に燃えていた。ところが前半５試合は勝利はしたものの薄氷を踏むような試合が続いた。第一節、第二節とも二桁得点を挙げて順調に勝利を重ね早々と首位になったが、深夜の東京ドームでの第三節フラワーズ戦、先制しながらも逆転を許す苦しい展開ながら参加した18選手全員の気持ちをひとつにして逆転、そのまま逃げ切って10年前の東京ドーム同様の逆転勝利。第四節のゼファーズ戦もお互い譲らぬ熱戦となり、僅か１点差で再び逆転勝利をおさめた。第五節のフィッシャーズ戦は６回を終え４点のビハインドで敗色ムード濃厚だったが最終回、絶対に最後まで諦めない気持ちが怒涛の攻撃となり一挙７点を奪って逆転勝利。この３試合連続逆転勝利は本当に大きかった。 東京ドーム開催があったため変則日程となりＳリーグ試合としては８年ぶりに７月に行われた第六節、前半５試合は厳しい戦いが続いたが、後半の５試合は圧巻だった。まずミラーズに12対１で圧勝。さらにゲリラ豪雨の影響で２ヶ月も間の開いた第七節ゼファーズ戦にも10対２で快勝して早くも優勝に王手をかけた。翌週の２位フラワーズとの直接対決に勝利した時点でリーグ最速となる第八節での優勝となる。そんな大一番もシーソーゲームの末に勝利して早くも優勝を決め、見事に覇権奪回に成功した。しかし、それだけでは満足せずに次なる目標を全勝優勝に定めて臨んだ第九節のフィッシャーズ戦、貪欲に得点を奪い10対３で勝利して全勝優勝にも王手をかけて最終節を迎えることができた。 優勝を決めた１ヶ月前は汗ばむほどの陽気だったが、この日はこの秋一番の冷え込みとなり12月並の気温となった。ほとんどの選手が長袖のアンダーシャツを着て試合に臨んでいたが、前日に44歳になったばかりの田辺はいつもと同じく元気に半袖姿。その田辺が初回、先頭打者として四球を選んで出塁すると、当然のように二盗、さらに三盗に成功。３年ぶりにＳリーグ盗塁王を狙う44歳はこの試合も積極果敢に走った。一死より鈴木がキレイにタイムリーを放って田辺がゆっくりと生還して先制、さらに盗塁数で田辺を追いかける鈴木も二盗、三盗を敢行し伊藤のタイムリーでホームを踏んで初回２点を奪った。しかし２回にはヒットの菊池、野選出塁の仁上を塁に置きながらも後続が倒れて無得点。３回も箕浦のヒットや三笘の実に2002年８月以来６年ぶりとなるヒットでチャンスを作るがホームは遠かった。軟投派の投手と対戦すると、得点の雰囲気は常にありながらも、チャンスに早打ちを繰り返してしまい、なかなか得点できない悪いクセが打線全体に出ていた。だが４回、振り逃げで一塁に生きた鈴木が早速、盗塁を仕掛けてチャンスを呼び込むと、前打席に続いて伊藤が適時打を放って、ようやく１点を追加した。 ジュピターズの先発マウンドには後半４試合目の先発、ここまでＳリーグで５勝を挙げている高橋が登る。フラワーズのエース投手が４勝を挙げ、もし最終節で５勝目を挙げれば現時点の高橋と並んで同数最多勝となるが、高橋が最終節も勝利投手になれば６勝となり単独最多勝を狙えるので、当然そのつもりの先発マウンドである。その高橋は今年７月19日に結婚式を挙げてから投げた試合は全て勝利している。先発を仁上に譲った優勝を決めた第八節フラワーズ戦も、チームが後半に逆転したので勝利投手となるツキもあった。結婚後はノリにノッテいる高橋はこの試合でも本領を発揮し、４回を投げて３本のヒットは許すものの無四球。１点は奪われたがエラー絡みなので自責点はなく勝利投手の権利を持ったままマウンドを仁上に譲った。本来なら球数も少なく打たれていない高橋の続投なのだが、後ろに回った仁上にはＳリーグベストコントロール賞のため投球回数が必要だった。ここまで規定投球回数に２イニング足りていなかったため、リーグ最高となる０点台の四死球率を誇りながらも、この試合で２イニングを投げなければ表彰対象から外れてしまう恐れがあった。そのため高橋を勝利投手の権利のある４回で降板させ、残り３回もしくは時間の関係で２回を仁上が投げればチームから最多勝とベストコントロール賞を出せることになる。すでに優勝を決めているからこそできる個人タイトルのための投手交代だった。その仁上は５回、６回を無難に抑えて待望の規定投球回数に到達した。 一方、打線は苦手の軟投派投手に５回、６回を三者凡退に抑えられ追加点を奪うどころかランナーすら出せず３対１のまま最終回の攻防へと移った。ここから相手のミスを突く得意の嫌らしい攻撃が目覚める。まず先頭の後藤と続く三笘が連続四球で出塁すると田辺の内野ゴロがフィルダースチョイスとなり、相手内野手のスキを突いて後藤が三塁を蹴ってホームに生還し、ようやく追加点を奪った。さらに敵失や代わった相手投手の制球難を攻めて連続押し出し四球、とどめに菊池の２点タイムリーで一挙６点を奪って試合を決めた。 リードを広げてもらった仁上は最終回、規定投球回数に達して気が緩んだのか、珍しく制球が乱れて２ヶの四球を与え１点を奪われるが大勢に影響なくゲームセット。 結局、最終節も見事な勝利をおさめＳリーグ第16回大会は10戦10勝と無傷の全勝優勝を達成した。１シーズン制となってからは2004年の第12回大会に明治乳業埼玉工場が全勝優勝して以来４年ぶり２チーム目の快挙である。ジュピターズの10試合の得点は91点で今大会リーグ最多、失点は35点でリーグ最少、長丁場のリーグ戦でも投打のバランス良く戦えた結果であり、第一節に首位になってから首位の座を１度も譲らずに最後まで駆け抜けたことになる。まさしく完全優勝と言っていいだろう。 この試合でも勝利投手となった高橋は後半戦５試合すべてに登板し５連勝でＳリーグ今大会６勝目となり単独最多勝を手中にしたと同時に大会ＭＶＰもゲットした。練習試合を含む年間でも入団９年目にして自己最多となるシーズン７勝目を達成した。（今までの自己最多は2001年と2003年の６勝）規定投球回数に達した仁上も２四球を与えたので残念ながら０点台の四死球率を維持できなかったが見事、リーグ記録を更新する３年ぶりのベストコントロール賞を受賞。まさしく早くに優勝を決めたチームだからこそできる個人タイトル狙いの投手交代がピタリとはまった。さらに44歳になったばかりの田辺が、この試合も２盗塁を決め、３年ぶりにＳリーグ盗塁王に返り咲いた。そして、この試合は無安打ながらも一時は６割以上の高打率でＳリーグのバットマンレース独走だった手塚が何と９年ぶりのＳリーグ首位打者、それもリーグ記録を更新する数字を残した。優勝、それも全勝いや完全優勝したチームなので多数のタイトルホルダーの輩出は当然であるが、タイトルに手が届かなかった選手達も今大会は本当に頑張った。 ジュピターズはチーム創設時に掲げた永遠不変のスローガン「楽しみながら勝つ」の元に戦っているが、グランドに来た全員が平等に楽しむため、どんなに勝利が必要な試合でも全員打順を採っている。首位攻防戦となった東京ドーム記念試合は18選手が参加したため打順は１番から18番まで。全勝優勝がかかった今日の試合も15選手が参加したので15番までの打順で臨んだ。時としてこの全員打順がチャンスを殺してしまう場合も多いし、勝利への足かせになってしまうこともある。だが、せっかくの休みの日に早起きしてグランドまで来ている全員が同じように楽しむためには「楽しみながら勝つ」という大いなる矛盾ではあるが、この体制を今後も続けていくつもりである。なぜなら、何人参加しようが全員打順を常に採用しても完全優勝ができることが証明されたから。大いなる矛盾と一緒に全員が同じだけ楽しめば伝説は創れるのである。全員がヒーローだったＳリーグ15周年記念大会、またひとつリーグの歴史に大きな伝説を残すことができた。 |
| 守 備 |
名前 | 打席 | 打数 | 安打 | 打点 | 四球 | 三振 | 盗塁 | 失策 | 通算 打率 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| 8 | 田辺 | 3 | 2 | 0 | 0 | 1 | 1 | 2 | 0 | .321 | 四球 | … | 三振 | … | … | … | 野選 |
| 2 | 則 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .212 | 三振 | … | 投ゴ | … | … | … | 中飛 |
| 5 | 鈴木 | 3 | 3 | 1 | 1 | 0 | 1 | 3 | 2 | .220 | 左安 | … | … | 振逃 | … | … | 二失 |
| 72 | 佐藤 | 3 | 2 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | .286 | 三振 | … | … | 中飛 | … | … | 四球 |
| 3 | 西浦 | 3 | 2 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | .368 | 二失 | … | … | 一ゴ | … | … | 四球 |
| 6 | 伊藤 | 3 | 2 | 2 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | .333 | 中安 | … | … | 左安 | … | … | 四球 |
| 97 | 三輪(助) | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | --- | 三振 | … | … | 三振 | … | … | 三振 |
| 4D | 菊池 | 3 | 3 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | .216 | … | 左安 | … | … | 投ゴ | … | 中安 |
| 17D | 高橋 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | .118 | … | 三ゴ | … | … | 遊飛 | … | 投ゴ |
| D1 | 仁上 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | .143 | … | 野選 | … | … | 投ゴ | … | … |
| D | 手塚 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .406 | … | 投飛 | … | … | … | 投ゴ | … |
| D4 | 金子 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .120 | … | 三ゴ | … | … | … | 一飛 | … |
| D9 | 箕浦 | 2 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .217 | … | … | 右安 | … | … | 捕飛 | … |
| D | 後藤 | 2 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | .154 | … | … | 遊ゴ | … | … | … | 四球 |
| D | 三笘 | 2 | 1 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | .333 | … | … | 遊安 | … | … | … | 四球 |
| 合計 | 39 | 33 | 7 | 6 | 6 | 7 | 7 | 6 | .244 | 試合時間1時間45分 | |||||||
| 名前 | イニング | 打者 | 安打 | 三振 | 四死 | 自責 | 防御率 | 投球数 | |
| ○ | 高 橋 | 4 | 16 | 3 | 4 | 0 | 0 | 0.47 | 56 |
| Ｓ | 仁 上 | 3 | 13 | 1 | 5 | 2 | 1 | 2.15 | 44 |
