今年の梅雨入りは観測史上３番目に早い５月29日だった。異例とも言える５月中の梅雨入りだったが、明けるのも早く、試合前日の７月６日に関東甲信地方が例年より11日も早く梅雨明け。いよいよ夏本番を迎えた。梅雨明け翌日の大宮の気温は朝からグングンと上がり、この日は運悪く試合開始時間が12時30分と日中で最も暑い時間である。プレイボールの前には、すでに気温は35℃に達する猛暑日となった。そんな猛暑地獄の中、灼熱炎天下の大宮で自虐的な夏の練習試合２戦目が始まった。
初回、先頭の岡村が死球で出塁すると、盗塁やワイルドピッチの間に三塁まで達し、二死から則のサードゴロが敵失となり、その間に岡村が先制のホームを踏んだ。ジュピターズ先発の仁上は初回、四球でランナーを１人出すが、後続を打ち取り無得点に抑え、上々の立ち上がりに見えた。炎天下での試合の鉄則は、攻撃は長く、守備は短くである。しかし２回、松本、菊池、箕浦が３人で僅か４球で３者凡退に倒れてしまい、休む間もなく仁上はマウンドに登らなくてはならなかった。すると、いきなり連打を浴び、自らのエラーも絡んで２失点で逆転を許してしまう。さらに３回にも内野安打の後、レフトオーバーの三塁打を打たれ１点を献上してしまった。
２点を追いかけるジュピターズは４回、敵失出塁の高橋と四球の佐藤が盗塁やパスボールの間に進塁し、一死二、三塁のチャンスを迎えたが手塚が三振、しかし捕手が後逸したのを見て手塚は振り逃げを強行。手塚はアウトになるも三塁から高橋が生還して１点を返し１点差に詰め寄った。だが、その裏に仁上が３本のヒットを浴び１失点、さらに５回には５本のヒットを集中され３点を失いノックアウト。なんと仁上は５イニングで自己ワーストの13安打を浴び７失点と炎天下での試合を差し引いても想定外の内容だった。
２回以降、小刻みに得点する相手とは逆にジュピターズの得点は相手のミスによるもの。２回に西浦、伊藤、北島の３連打で無死満塁のチャンスも後続が呆気なく倒れタイムリーが出ずに厳しい状況に追い込まれた。６回からマウンドに登った高橋も、いきなり死球をぶつけた後に２本の長短打を許して２失点。６回を終え得点差は７点と敗色ムード濃厚となったがドラマはここから始まった。
まず７回、死球の岡村が猛暑など気にせず積極果敢に二盗、三盗を敢行。一死から佐藤も死球で出塁して当然、二盗。則の外野フライで岡村が生還。結局、この外野フライは相手が落球し、則も塁に生きると二盗でチャンスを広げ、手塚の内野ゴロで佐藤がホームイン。さらに仕事のため欠場が続いていて久々の出場となった松本がセンター前に弾き返して則が生還。この試合、初めてのタイムリーでの得点が生まれ、結局１安打ながらも３点を奪い反撃態勢を整えた。どんなに暑くても、どんなに過酷な状況でも、最後まで諦めず集中力を切らさないで積極果敢に足を使って攻めた結果が、この回の３点に結びついた。本来なら、この７回で試合は終了するが、この日は炎天下での９イニング制試合。この暑さの中での長丁場の試合を未経験の相手チームには地獄に感じたかもしれない。序盤に走りまわって得点を重ねた結果、スタミナを使いきり集中力も完全に切れていた。毎夏、自虐的に真夏の９イニング試合を経験してきたジュピターズとの差がついに出始めた。
８回、先頭の西浦が四球で出塁し、伊藤がこの試合２本目のヒットで続く。北島も粘って四球を選んで無死満塁。３回にも同じメンバーで無死満塁のチャンスを作りながら、後続倒れ無得点に終わったが、相手の集中力が切れたこの回は違った。まず仁上が前進守備の間を抜くセンターへのタイムリーで西浦がホームを踏む。さらに後藤、岡村、高橋と創設初の３者連続押し出し死球をぶつけられ、伊藤、北島、仁上が生還。仁上がホームを踏んだ時に一時、７点あった得点差はなくなり試合は振り出しに戻った。完全に切れていた相手に対して容赦ない攻撃は続いた。一死から則がレフトへ犠牲フライを打ち上げ後藤がホームを踏み逆転に成功。さらに弱った相手にとどめを刺すには充分すぎる手塚の２点タイムリーも出て岡村、高橋と相次いでホームイン。結局、この回は打者11人を送り７点を奪うビッグイニングとした。ちなみに岡村は１試合３死球で2009年の高橋（対ゼファーズ）、2010年の長谷川（対横浜ウィルス）と並ぶタイ記録。３死球で出塁して３度ホームを踏んだのは岡村が初めてである。
代わり端の６回に２点を失った高橋だったが、７回以降はランナーを出すものの、決してホームは許さず炎天下の試合でも力を発揮した。結局、終盤の７回、８回の２イニングで10点を奪ったジュピターズが12対９で逆転勝利をおさめ、昨年チームMVPの高橋は遅ればせながら今季初勝利を挙げた。
梅雨明け翌日、猛暑日となった炎天下の大宮での９イニング試合。12時30分から始まり15時10分に終了。試合時間２時間40分、１日で最も暑い時間帯での試合は、まさに地獄のような試合となったが、最後は経験の差が大きかった。どんなに暑くても最後まで集中力を切らさず、諦めずに戦ったことが勝利に結びついた。しかし、試合中に箕浦と西浦が相次いで負傷。勝利の代償も大きかった。いくら猛暑の中で集中力を切らさず戦っていても、身体が無理できない年齢になってきている選手が増えてきたのは否めない。すでに今夏の日程は決まっていて次の試合も大宮９イニングだが、来季から真夏の９イニング試合は考えなくてはならない時期に来ているのかもしれない。
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