| 11月末ながら予想以上に暖かな陽気の中で始まった第１試合に比べ、14時過ぎにプレイボールとなった第２試合は冬の到来を間近に控えた冷たい風が吹いて容赦なく体温を奪っていった。いよいよ1990年の創設より数えて20度目のシーズンの最終戦である。昨年のＳリーグに完全無欠の全勝優勝を果たし、今季スローガンを「誇り」と題しパーフェクトチャンピオンとして堂々と戦い続けた2009年シーズン。昨年同様、雨による中止が相次いだために長い期間、試合から遠ざけられもしたが、その間もモチベーションを高く維持し続けた結果、Ｓリーグの歴史の中でも、まだどこのチームも成し遂げることができなかった２年連続優勝という金字塔を苦しい戦いの末に打ち立てることができた。リーグの歴史に名を刻むとともにチーム創設20年目の記念すべき年に伝説を残すことができたことは、新たな黄金時代の幕開けを予感させる2009年シーズンだった。黄金時代の幕開けとなった2009年シーズンもいよいよ最後である。今年の締めくくり、第１試合が延長の末、引き分けだっただけに、ビシッと最後を決めたいと誰もが思っていた。だが、予想外の結末が待ちうけていようとは…。 初回、久しぶりに復活した岡村、高橋の１、２番コンビが連打＆盗塁で無死二、三塁と先取点を挙げるだけではなく、一気に大量点を挙げるには絶好のチャンスを作るが、期待のクリーンアップトリオが簡単に倒れて無死二、三塁から１点も奪えずイヤな立ち上がりだった。案の定、直後の１回裏、先発の高橋は打ち取った当たりながら落ちた場所が良いというアンラッキーなヒットを３本浴びて１点を先制されてしまう。なんとなく初回からイヤな雰囲気はあったが２回、則がヒットで出塁し伊藤のタイムリーで生還して早々に同点に追いついた。さらに４回には再び岡村、高橋の１、２番コンビが魅せた。まず岡村が投手と三塁手の間に絶妙なセーフティーバントで出塁すると、すかさず盗塁を決める。さらに間髪入れずに高橋も三塁前にセーフティーバント。野球を知りつくした２人が魅せる、どちらも三塁手が捕るだけで精一杯の狙い通りの連続バントヒットだった。そして打席には３番の三輪が向かう。三輪は高橋、岡村と同じ静岡県の中学同級生であり３年前の岡村同様、高橋に誘われてジュピターズに入団した。目の前で同級生２人の活躍に刺激されないわけがなかった。フルスイングした三輪のバットに弾かれた白球は鋭いライナーで三塁手の頭上を越え、岡村が楽々と生還。静岡トリオの活躍により逆転に成功した。この後も内野ゴロの間に高橋がホームを踏んで結局この回は２点を奪った。 静岡トリオの嫌らしい攻撃が功を奏して２点を奪った直後、マウンドの高橋が不可解な行動に出る。一死から次打者を敬遠気味に歩かせてしまうと二盗、三盗され、三塁手の鈴木から高橋への送球が逸れた間にホームまで許してしまい１点差に詰め寄られてしまった。 捕手も内野陣も高橋の敬遠気味の投球が理解できないうちに失点してしまった感じである。結局、高橋は５回を投げ６安打は打たれたものの２失点と要所は締めてマウンドを後にした。 １点差に詰め寄られ追加点を欲しいジュピターズは５回、一死から西浦、伊藤の連打が出るが後続倒れ無得点。６回も二死から後藤が粘って四球で出塁して先頭の岡村につなげたが得点にはならず。最終回は打撃三冠王を確実とした佐藤が二塁打を放ち、さらに三盗を敢行してチャンスを広げるがホームは遠く、結局この試合も二桁安打を放ちながら打線につながりがなく３点しか奪えなかった。 高橋に代わって６回から鈴木が今季初マウンド。第１試合の岡村同様に来季のピッチングスタッフとして期待を込めての登板である。しかし昨年は９イニング完封勝利も果たし、すでに実績は十分の鈴木。６回は四球で２人のランナーを出すが、慌てることなく後続を打ち取り無得点に抑える。そして最終回、先頭打者は少し一塁よりのセカンドゴロ。回り込んで捕球しようとした菊池が後ろに逸らしてしまいノーアウトのランナーを出してしまった直後に二盗を許す。次打者の打球はセンターへ。浅いフライだったために中堅手の仁上が前進して捕球するか無理せずシングルヒットにするか迷った分、判断が遅れて後ろに逸らしてしまうワンヒット･ワンエラーで二塁ランナーがホームまで戻って土壇場で同点に追いつかれ、前試合と同じような展開となってしまった。前試合は引き分けで済んだが、この試合は残酷な結果だった。無死二塁と一打サヨナラのピンチ。続く打者の打球もセンターへの飛球。しかし平凡なフライで誰もが一死と思った瞬間、目を疑った。打球は仁上のグラブの先端に当たって後ろへ転がっていく。仁上は慌ててボールを拾おうとしたが、慌てた分だけ手に馴染まず、内野に返球した時はすでに遅かった。二塁ランナーがホームを踏んだ瞬間に相手チームに４点目が入り、2009年シーズン最終戦は「まさかの」サヨナラ負けが決定。最終戦の敗戦は５年ぶりであり、もちろんサヨナラ負けは初めての経験である。20年目の最後に野球の恐ろしさを思い知らされた試合となってしまった。１回0/3を投げた鈴木は自責点０ながら1999年５月以来10年半ぶりに敗戦投手となってしまった。 創設20年目にして初の屈辱を味わったが、とりあえず２年連続して雨に悩まされた今シーズンは無事に終了した。最終戦にダブルヘッダーを組んだので試合数は昨年よりも１試合だけ増えた。そしてＳリーグ２連覇を含めた勝敗も12勝３敗２分、勝率.800と堂々たる成績を残すことができた。まさしく選手の誰もが「誇り」を胸に戦った１年だった。 気になるタイトルの行方だが、このダブルヘッダーで３安打して２位との差を１割以上に広げた佐藤が打率だけでなく打点、本塁打と打撃３部門でトップを維持し、2005年以来チームとしては通算４人目（過去の三冠王は田辺、手塚、佐藤）佐藤自身は２度目の三冠王を獲得した。２度目の三冠王はチーム初の快挙である。 タイトル常連の佐藤だが昨年はチーム、Ｓリーグとも無冠に終わり、今季に賭ける思いは強かった。全試合出場を果たした中での三冠王は見事である。 このダブルヘッダーを欠場したために規定打席から外れたが盗塁王は田辺が逃げ切って獲得した。田辺は先日、ＳリーグＭＶＰにも選出されているが今季チームの17試合では規定打席に僅か１打席届かず、昨年同様に規定打席未満でのタイトルホルダーとなった。しかしＳリーグ盗塁王とダブル受賞である。 最後まで分からなかった最高出塁率はトップだった三輪がダブルヘッダー２試合で６打席２出塁。僅かの差で追いかけていた後藤は５打席２出塁だったため、その差はなくなり同率で三輪と後藤が２人で獲得となった。最高出塁率が２人同率で受賞になるのは1992年以来のことである。今季新入団の三輪は2006年に入団して、いきなりタイトルホルダーとなった岡村以来の新人タイトルホルダーであり、一方の後藤は第２試合最後の打席の四球出塁が８年ぶりのタイトルを呼び込んだ。さらに46歳６ヶ月でのタイトル獲得で最年長記録を更新した。 信じられない形で幕を閉じた堂々の20年目が終わり、いよいよ来季はチーム満20周年の年でもある。20歳を迎えた大人のチームが前人未到の記録更新に挑戦する年になる。楽しみながら勝つ歓びを求め続けて20年、しかし今後も変わらずに前へ進んでいくだけだ。 １年間の激戦、お疲れ様でした。来年１月の優勝旅行で再会して大盛り上がりをした後は、また一緒にグランドで同じ夢と楽しみを共有しよう。 |
「俺たちはかなり強い！」
| 守 備 |
名前 | 打席 | 打数 | 安打 | 打点 | 四球 | 三振 | 盗塁 | 失策 | 通算 打率 |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| 7 | 岡村 | 3 | 3 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | .429 | 中安 | … | … | 三安 | … | 投飛 | … |
| 1D | 高橋 | 3 | 3 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | .250 | 左安 | … | … | 三安 | … | … | 一ゴ |
| 35 | 三輪 | 3 | 3 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0 | .321 | 三振 | … | … | 左安 | … | … | 三振 |
| 2D | 佐藤 | 3 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | .426 | 投飛 | … | … | 遊ゴ | … | … | 中２ |
| D3 | 手塚 | 3 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | .231 | 三ゴ | … | … | 一ゴ | … | … | 投ゴ |
| D2 | 則 | 2 | 2 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .214 | … | 中安 | … | 三振 | … | … | … |
| 5D1 | 鈴木 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | .375 | … | 遊ゴ | … | … | 捕飛 | … | … |
| D | 西浦 | 2 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .281 | … | 投ゴ | … | … | 中安 | … | … |
| 6 | 伊藤 | 2 | 2 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | .300 | … | 中安 | … | … | 投安 | … | … |
| 4 | 菊池 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | .233 | … | … | 右飛 | … | 三ゴ | … | … |
| 8 | 仁上 | 2 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | .176 | … | … | 左安 | … | 遊飛 | … | … |
| 9 | 箕浦 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .152 | … | … | 三ゴ | … | … | 左飛 | … |
| D | 北島 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .333 | … | … | 中安 | … | … | 投ゴ | … |
| D | 後藤 | 2 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | .250 | … | … | 三ゴ | … | … | 四球 | … |
| 合計 | 33 | 32 | 11 | 3 | 1 | 3 | 5 | 4 | .266 | 試合時間1時間40分 | |||||||
| 名前 | イニング | 打者 | 安打 | 三振 | 四死 | 自責 | 防御率 | 投球数 | |
| 高 橋 | 5 | 23 | 6 | 6 | 3 | 1 | 0.69 | 75 | |
| ● | 鈴 木 | 1 0/3 | 8 | 1 | 0 | 2 | 0 | 0.00 | 27 |
