もうすぐ師走だというのに朝から気温が上昇。11月下旬とは思えないほどのポカポカ陽気に恵まれたこの日、ジュピターズ20周年記念シーズンでもある2010年の最終戦を迎えた。昨年同様に最終戦は対戦相手を替えてのダブルヘッダーが組まれた。ここ数年は雨の影響により、計画通りに試合消化ができず、年間20試合未満のシーズンが続いたが、今シーズンは雨天中止は２試合のみ。この日のダブルヘッダーで年間試合数は３年ぶりに20試合に到達した。しかし、20周年記念シーズン最後の試合にもかかわらず参加メンバーは12名とダブルヘッダーにしては少し寂しい状況。今年は助っ人を頼むほどの事態にはならないものの、例年なら参加メンバーが多い状態が年間を通して続いていたが、最近は11名〜12名体制が多くなり、常に参加している選手にかかる負担も大きくなっていた。だが、そんなことを余所に参加したメンバーは絶好の野球日和、今年最後の戦いに意気込んで臨んだ。
高橋、長谷川が揃って欠場のため第１試合の先発マウンドに登ったのは岡村だった。前回の先発は３ヶ月前、この日と同じ対戦相手に勝利していた。自信を持って投げ、初回は見事に三者凡退に打ち取るが２回、一死から死球をぶつけ、二盗や内野ゴロの間に三塁まで進まれ、続く打者の当たりは平凡な内野フライに思えたが、ちょうど太陽の位置とボールが重なり野手の目からボールが消えてしまい、投手、一塁手、二塁手の間にポトリと落ち、その間に三塁ランナーが生還、先制されてしまった。
だが、直後の２回裏、一死から手塚がヒットで出ると、続く西浦のバットから放たれた打球は右中間を深々と破り、アッと言う間に隣のグランドの一番深い所まで転がる。中継も乱れたために手塚に次いで打った西浦も巨体を揺らしてホームを駆け抜けた。西浦の実に５年８ヶ月ぶりとなる今季初ホームランですぐに逆転に成功した。
ところが３回、先頭打者を味方のエラーで出すと、２本の長短打を浴び、さらに犠牲フライもあって３点を献上し逆転を許してしまう。だが、直後に敵失絡みで１点を返して１点差に詰め寄るものの、５回にエラー絡みで１点を与え５対３と点差は２点のまま終盤へ。
毎回ランナーを出すがホームの遠いジュピターズだったが６回裏、二死から岡村を一塁に置き、三輪がセンターの頭上をはるかに超える大飛球を放ち岡村が一塁から長駆ホームインで１点差にして最終回に望みをつないだ。先発の岡村も初回こそ三者凡退に打ち取ったが、その後は常にランナーを背負う苦しいピッチングが続いた。６回、７回とスコアリングポジションにランナーを置いたが渾身の力で投げ抜き、最後までマウンドを譲らず７回を被安打３、５失点で投げ切った。岡村にとっては入団初完投でもあった。
そんな岡村の好投になんとか応えたい打撃陣は最終回、苦せずに思わぬチャンスが転がり込んだ。なんと勝利を意識したのか相手投手が全くストライクが入らず、手塚、西浦、伊藤と三者連続四球で無死満塁の大チャンスをもらう。続く北島は力が入りすぎてキャッチャーフライに倒れ一死となり仁上が緊張の面持ちで打席に入る。ここまでの２打席、タイミングが合わずに２三振に倒れている仁上だったが、肩の力を抜いて振り切ったバットに弾かれた打球はセンター前へ低い弾道で飛んでいく。一か八かセンターは地面すれすれで捕球するためグラブを差し出しながら前進するが、打球はグラブの手前で地面に落ち、中堅手のグラブをかすめて後ろに転がった。三塁ランナーの手塚は楽々とホームを踏んで同点。さらに捕球されると思い１度は帰塁した二塁ランナーの西浦も三塁を蹴ってホームを駆け抜けた。２点目が入ったこの瞬間、劇的なサヨナラ勝利が確定した。２三振に倒れていた仁上の意地の一打が奇跡を呼び、2010年最終戦ダブルヘッダー第１試合は見事なサヨナラ勝利となった。最後まで粘って投げた岡村は入団初完投勝利で今季３勝目。そして岡村が先発した今季の３試合は全て勝利したことになり新・無敗伝説の誕生でもある。
今季初のサヨナラ勝利の興奮が冷めやらぬままグランドを移動し、予想外の混戦となったため第２試合のプレイボールは間近に迫っていた。
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